第9回 弁護士と建築士が共同で分かりやすい準備書面をつくる | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
前々回では、躯体工事が終わって仕上げや設備も半分以上でき上がった時点で中断した建築工事をめぐり、ゼネコンが発注者に工事代金の支払いを求めた訴訟において、発注者が反論として提出した準備書面の一部を紹介した。今回はその続編である。 今回紹介する準備書面は、訴訟の対象となったRC造建築物の欠陥について説明し、原告の工事のずさんさを証明しようとしたものだ。 内容を整理すると以下のようになる。
建築士と弁護士が準備書面を合作 今回の準備書面で指摘された欠陥の内容は以上の通りだが、問題はこれらをいかに分かりやすい文章で説明するかだ。 相手が建築技術者なら、以上に列挙した事項だけで【これはひどい手抜き工事だ】と分かるだろう。しかし、裁判官が相手では“馬の耳に念仏”なのである。 実際、この訴訟では被告側の弁護士も事の重大性をすぐには飲み込めなかった。建築士はフープとは何かから始めて、その役割、それが不良鉄筋でつくられた場合の危険性などを半日かけて説明した。それでも弁護士は納得できなかったのである。 このため、この訴訟では建築士が準備書面の下書きを作成し、弁護士はそれを2,3日かけて読んだ後で改めて建築士に質問し、準備書面を作成し直すという作業を行った。 弁護士の質問を聞くと、建築技術者にとっては常識と思っていた言葉の意味が理解できないため、全体の危険性についても飲み込めていないことが分かった。弁護士に理解できていない言葉が裁判官に理解できるはずもない。それらの理解できていない部分については念入りに説明し直した。 こうしてでき上がった準備書面を読むと、【なるほどこれなら裁判官も理解できるに違いない】と思うような文章になっている。読者の方々には下の準備書面を参考に分かりやすい文章をつくる努力を心がけていただきたい。
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