第7回 裁判の準備書面では主張と反論を徹底する | |||||||
1.原告の主張とそれに対する反論 (1)原告の主張 原告の主張を要約すれば次の通りである。 1.原告は被告との間で、請負工事金額○○億円、竣工後一括払いの工事契約を締結した。 2.原告は契約締結後、着工したが、 イ.被告の責に基づく工事中止期間が2ヶ月以上になったこと。 ロ.被告には請負代金支払いの意志も無く、能力も欠いていることが明らかになったこと。 の2点を理由にして、本件請負契約を解除する旨の通告をした。 3.被告は契約解除の時点での出来高分代金○○億円を支払うべきである。 (2)反論 以上の原告の主張には理由がなく、契約解除通知を出したのも、本件工事における原告の会社ぐるみの、自己の不当な利益を目的とした計画的な無責任工事、手抜き工事、建築基準法違反工事の数々が被告に発覚し始めたため、これらが公になるのを恐れ、これを隠ぺいするために行ったものである。 このような点について、本件請負契約成立から、瑕疵工事発覚の経緯、現在までに判明した本件工事の瑕疵、その危険性を明らかにし、原告の主張に理由がないことを明確にする。 ただし、これらの点については本準備書面においては要点のみを主張し、その詳細については次回の準備書面において主張する。 2.本件請負契約の成立および着工 (1)契約の成立(省略) (2)契約書に図面が添付されていなかった理由 本件請負契約は被告を発注者、原告を請負者として昭和○年×月×日、当事者並びに監理技師の署名押印がなされた。(中略) しかし、この契約書には設計図面も見積書も添付されておらず、工事場所、工期、金額支払条件を書いた紙片1枚だけである。建物の構造、階数、延床面積すら記載がなく、単に【設計図351枚に基づいて工事請負契約を結ぶ】と書いてあるだけである。 これでは発注された建築工事の内容、規模、程度がはっきりしないばかりか、後日になって設計者や請負者が勝手に当初の設計内容を変更し、大幅に異なる建物をつくり上げても、発注者は契約違反の立証のしようがなくなる。本件請負契約締結の当初から、原告(請負者)や監理者には、両者に対する被告(発注者)の信頼感をよいことに、その技術的無知につけ込んで設計内容を大幅に変更して不当利益を得ようとの目的があったと考えるのがごく自然である。 ちなみに、原告が被告のもとに【契約用の設計図】と称して351枚の図面を製本して持参したのは契約後7ヶ月も経ってからで、その内容が当初の設計内容と大幅に異なっていることは原告側準備書面においても、また証人尋問でも既に認めているところである。 そして本件請負工事は、前代未聞ともいうべき無責任な変更工事、瑕疵工事、建築基準法違反工事が大々的に行われ、その結果、工事内容が注文と大きく異なるだけでなく、構造上も安全性を保障できないと鑑定された危険な建物になってしまったので、本件裁判に発展したわけである。 3.原告の勝手な変更工事 (1)原告の勝手な変更工事発覚の経緯(省略) (2)〜(7)変更・手抜き・違反工事の内容(省略) (8) 以上のような無断変更工事や手抜き工事による構造上の安全性について、被告が原告らを追及していたところ、原告は昭和○年×月ごろ突如本件工事を中止した。 被告は、原告が無断変更工事や手抜き工事について善後策を講じているものと思っていたところ、原告はこのような無責任工事が公になることを恐れ、それを防止するための奇策を用いてきたのである。 4.原告の奇策 (1)原告による本件請負契約の解除通知(省略) (2)破産の申立 原告の無責任工事を隠ぺいするための第2の奇策は昭和○年×月の被告に対する破産宣告申立である。 工事請負の解除通告は破産申立のための前工作だったのである。破産の申立をされたことでけでも経済的、社会的信用が失墜して、破産するはずのない会社でも破産するのが常識である。原告は被告を破産させることによって一切を闇に葬ってしまおうとしたのである。 5.契約解除の無効性(省略) 6.無断変更工事の内容(省略) 7.構造上の危険性の証明(省略) 8.本件建物の取り壊しと建て替えの要求(省略) 9.本件工事の社会的重要性 数十億円の建物工事においては請負者は手抜き工事をすれば数億円の不当利益を簡単にあげることができ以上のように準備書面では“争う”部分についての相手方の主張には徹底的に反論を加え、当方の主張については徹底して強調することが重要だ。証拠書類などはこれらの主張や反論の裏付けとして必要なだけで、決して主役ではない。主役はあくまで弁論や論述なのである。 |