大規模修繕とは何か
 計画修繕とか長期修繕計画、あるいは大規模修繕などの言葉が、マンションに関してはほぼ日常語句的に使われるようになった。しかし、マンション問題に関心の深い建築家が何人か集まった席上でも「大規模修繕の定義とは何だろう」ということになると、すんなりした答えがなかなか出てこない。この特集の企画会議の席上でも、やはりこれが問題となったが、あれこれ議論しているうちに何となく、次に掲げる4つの要素を含んでいるものを「大規模修繕」と言うことができるのではないか、ということになった。

1.費用が大きい
2.工期が長い
3.居住者の日常生活への影響が大きい
4.小修繕の集合

 1の費用の点に関しては、別に何億円以上というような分け方ではなく、これまでの修繕積立金の中からかなりの金額を支出するとか、あるいは居住者から一時的に負担金を徴収しなければならないというようなことを言う。何棟も何十棟もある団地型のマンションの場合、1棟ごとに見ればちょっとした小修繕であっても、全体ではすぐに大変な金額となる。しかし、これは金額が大きいというだけであって、大規模修繕とはいわない。やはり小修繕である。この金額に比べると絶対額でははるかに小さくても、市街地にある1棟マンションが屋根と外壁を全部やり直すというような場合は、大規模修繕である。

2の工期の点についていえば、例えば外壁に足場を組んで塗装などをやり直すとすると、かなりの日数を要する。そうなれば工事期間中、居住者にとっては一時的に窓の開閉禁止だとか、 マンションへの出入りや通路の制限だとか、いろいろな注意事項や制約が生じてくる。

これが3の居住者への影響ということになる。

 以上、3点の他に4として、例えばこまごまとした小修繕をその都度行なうのではなく、1年とか2年とか多少の不便は我慢してもらって、外壁や屋根のような比較的大きな修繕工事に合わせて行なうというようなこともある。
 これらを総括してみると、大規模修繕というものの輪郭がかなりはっきりしてくるようである。 しかし、繰り返していうが、学術的にも世間の常識としても、はっきりした定義はまだ定まっていない。
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