「修繕」と「改修(改良修繕)」の違い
 「自転車がパンクしたから修理をする」あるいは、「ドアの取手が壊れたから修繕する」などとよく言う。このように、明らかに機能を果たさなくなったモノの機能を回復させることを修繕とか修理とかいうのはわかりやすい。
 マンションの外壁が次第に汚れてきて、気が付いてみたら随分汚くなっていた。これは機能が停止したわけではない。美観を保つという機能が低下したのである。だから、これを塗り直して外見を新しくするのも、やはり修繕の部類に入る。一般的に言えば、建物が竣工した時に持っていた性能は、歳月とともに、いわゆる経年劣化していくのだが、この
劣化した性能を新築時のレベル、あるいはそれに近いレベルに引き上げることを「修繕」という。 さらに、外壁が汚れたが単に塗り替えるだけでなく、この際タイル貼りにしようとか、古いサッシをより気密性の高いものに取り替えようとかいう場合に、低下した機能を回復するだけでなく、新築時の性能よりもさらにグレードアップすることもある。これを「改良」と言うべきか、「広義の修繕」 と解釈するべきか、あるいはいっそ「改良修繕」と言う言葉を使うべきか、と迷うところであるが、今のところ定説はない。
 マンションのように非常にたくさんの部品や部分から成り立っているものでは、部位によって劣化の進行度合が違う。例えば、鉄部の塗装は2〜3年置きに塗り替えるのが常識とされている(しかし、しっかりした仕様に基づいて塗装が行なわれていれば、屋外鉄部でも10年くらいはなんともないのであるが)。屋根防水などは15〜20年は手入れ不要の場合が多い。このように部位によって劣化の年数が異なるのである。したがって、マンションの機能および美観などを常に良好な状態に維持していこうと思えば、1つ1つの部位について絶えず注意し、点検をして手遅れにならないように修繕をしていく必要性がある。
補修・修繕・改修・改良修繕・・・・・・修繕ブームにつれて、用語が意味するところも変わりつつある。 局部的な建物の損傷を直すことを、従来は「補修」と言っていたが、最近は「修繕」と言われている。 建物の一部または全部について、修繕をしながら間取りの変更や仕上げ材の取替えなどをするときには、「改築」ではややオーバーな表現になるので、「改修」という言葉が使われてきた。「改良修繕」 は最近の言葉だが、これを短縮して「改修」と言うと、従来の改修との間に混乱が起こるかもしれない。 が、今後は「改良修繕」の意味で「改修」という言葉が使われるようになりそうだ。
←前へ戻る 次へ進む→ TOPへ戻る↑