まえがき
 ここ数年、建築界では「維持管理」「長期修繕計画」「大規模修繕」という三大テーマによる講演会、セミナー、シンポジウム、特集があちこちで繰り返されている。 この盛況ぶりにはいくつかの理由が考えられる。マンションは毎年建てられるからとか、新たにマンション住まいを始める人が後を断たないから、との解釈も成り立つかも知れない(図1)。また維持管理のうちのソフトの部分、つまり管理組合の運営や管理規約の運用などについては、これまでの日本人の住まいの歴史にかなった概念であり、日常生活における常識としてまだ定着していないからともいえよう。あるいは、その基となる区分所有法が、まだ出来たてホヤホヤの法律で、不満足や不備な点もいろいろあるから、関係者がまごつくのも無理はない。法律も規約も総合して考え、討論し、今後徐々に改善していくことが大切である。そして修繕計画とか、大規模修繕については、これまでの住宅の概念になかったものであるから、理屈でなしに実感として人々の頭に染み込み、生活の常識となってしまうまでは、やはり繰返しの教育・啓蒙が必要なのであろう。だからこそ、本誌でもこのような企画がなされ、特集が組まれたといえる。
管理組合・・・・・・区分所有法第3条に「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」とある。これをマンションにあてはめてみると、団体は「管理組合」に、集会は 「総会」に、また管理者とは、「理事会及び理事長」にそれぞれ置き換えることができる。
 要するに、管理組合とは、共有財産としてのマンションを管理・運営していく団体ということである。「財産管理組合」といえば性格がはっきりするのだが、通常は単に管理組合としか言わないので、居住者の中には“マンション生活全体を管理する組合”と誤解している人も少なくないようである。 自治会と混同しているのであろう。

管理規約・・・・・・管理規約とは、区分所有法に基づいて、それぞれのマンション事情に合った共同生活のルールを決めたものである。その規約の中身も、「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する」ことと区分所有法で定められている。管理とは、管理組合の運営上のことであり、使用とは、各個人の部屋と部屋を含めた敷地や建物の使い方のことである。

区分所有法・・・・・・区分所有法は、昭和37年に制定された法律で、正式には「建物の区分所有等に関する法律」である。この法律では、マンションに生活する居住者のために戸建住宅とは違う住まい方の原則が定められている。しかし、急激な時代の変化とともに、いろいろ問題が起こってきた結果、昭和58年5月にこの法律の大幅な改正が行なわれ、昭和59年1月1日から施行された。この改正により、管理組合の存在が明確化されたことで、共同生活のルールの運営もスムーズにゆくようになったが、共用部分と専有部分の区分とか、専用使用権などの重要な点についてはまだまだ不明確であり、曖昧である。
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