第2回 設計の不備を監理で補い欠陥建築の発生を防ぐ | |||||||||||||
技術がらみの建築トラブル(本稿では建築裁判もしくは建築紛争処理委員会に持ち込まれた技術がらみの事件をすべて建築トラブルと称する)とは、はっきり言ってしまえば欠陥建築はなぜ発生するのだろうか。 その原因を大まかに分類すると、次のようになる。
建築士の取得試験の改善を 1.の設計の不備については、建築士の資格制度に関する問題が大きい。本来、建築設計者に求められるのは、何にも増して豊かな人生経験である。ところが、現行の制度では、大学を卒業した後、実務わずか2年間経験するだけで、1級建築士の受験資格が与えられ、合格すればすぐに設計事務所を開設できる。 そこで次のように提案したい。まず建築士を設計者資格と施工者資格にはっきり分ける。そのうえで、前者については学卒後5年間の実務経験で2級建築士の受験資格、さらにその合格者はサブチーフあるいは チーフとして5年間の実務経験を経てようやく1級の受験資格を得られるようにする。しかも試験はペーパーテストだけでなく、面接も採用する。 これだけ厳重な関門を設ければ、識見、技量ともに十分な1級建築士が生まれるだろう。そうなれば欠陥設計は無くなるに違いない。 最近は、大規模の組織事務所やゼネコンで、実力不足の新人1級建築士に対する社員教育がしだいに整ってきたと聞く。しかし、これにも問題がある。組織による組織のための画一的教育は、あまりにも網の目が細かすぎる現行の法規制や学会規準などと相まって、これらの若者から建築家として欠かすことのできない【創造性】の芽を摘み取ってしまうからだ。 そうして集団制作された巨大かつ華麗なビルに世人は目を奪われている。しかし、その裏で優れた建築家になれる資質を持った多くの若者が法規制や学会規準、社内規制などに通暁した有能なサラリーマンと化していくのは、憂慮すべきことだ。 完全な図面は存在しない 次に監理についての私論を述べたい。建築士法の第2条には【監理とは設計図書の通りに工事が進められているか否かを確認すること】とある。これがそもそも間違いである。 現行の建築士法が制定されたのは1950年。今から40年以上も昔のことだ。当時は日本中が焼け野原で、モノが全く無かった。 鉄も無ければコンクリートも無く、わずかにバラックに近い木造家屋だできるだけという時代である。そんな時代に制定された建築士法であることを考えれば、そろそろ新しい士法をつくり直すべきである。 さて、40年以上前の焼け野原の時代であろうと、経済的に繁栄した今であろうと、完全無欠で、その通りに工事を進めれば完全な建物ができ上がる設計図など、もともとあり得ない。 家電品やクルマなどの量産品と違い、建築はいずれも一品生産である(量産住宅というものがないではないが、これについては後述しよう)。テレビやカメラなどのように試作による試行錯誤を繰り返して、少しずつ設計の不備や製作上の問題点を解決し、改良していくことはできない。必ず一発勝負でいきなり本番にとりかかることになる。完全な設計図などがあり得ないのはこのためだ。しかし、それでは工事監理とは、一体何なのか。 監理では図面の不備を補う
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