2.工事監理技師制度の提案
井上博の提案シリーズ 2000年8月
現在、ゼネコンの現場で活躍している沢山の人たちがいる。大きな現場、小さな現場、楽な現場、苦しい現場・・・・・・。様々な辛酸をなめつくして40代になると、管理職として内勤になったり、不況になるとにわか仕立ての営業マンになったりして、せっかく人生の働き盛りの20年間に蓄えた技術を十分に発揮する場が与えられないままに定年を迎えることになる。本人のためにも業界全体を思っても、もったいない話である。

本来、工事監理者として望ましい人柄は、

 ・技術に詳しく、
 ・現場をよく知り、
 ・しかも人生経験の豊かな人である。

となると、
現場で長年経験を積んだ人が最適である。しかし今のままではいけない、現在は技術が見失われた時代であるほかに、現場マンの将来に明るい見通しのない時代である。

そこで私は次のような提案をしたい。それは、

 ・受験資格を30歳から45歳とし、
 ・資格発効年齢を45歳からとする監理技師の資格制度である。


試験の項目は細分化する。地盤、杭、土工事、コンクリート、鉄骨、防水、左官、金属・・・・・・等々、早く言えば現在の見積書の大内訳の項目ぐらいに分けて、その1つずつにかなり厳しい試験を行う。現在の一級建築士の試験はお笑い草となるような、突っ込んだ試験、現場での苦労が答案ににじみ出るような試験とする。
受験者は現場での実務が即受験勉強となるから、現在のような甘い考えでその日暮らし的現場経験とは全然別の、充実した日々になるであろう。

 ・汗を流して得た知識を活字や映像で補強して完全なものにする。
 ・ベースは実務を通じて体得した知識で、これはもう、一度習得すれば生涯忘れることはない。
 ・ただ、時代の変遷に取り残されないように時々、新知識の補充をする必要がある。
 ・構造、仕上げ、設備、というようなグループ分けをして資格を獲得してもよいし、
 ・全部を突破して文字通り監理のマイスターとなる人も出てこよう。
 ・コンクリートや鉄骨などは、それ1つだけの資格でも優に生活を保証できるであろう。

この制度が定着すれば、現場マンは技術者としての先輩後輩の間柄で監理技師から色々なことを学ぶこともできるし、独立資格の監理技師を雇うことによって建築主も安心である。設計者もこのベテランの監理技師から学ぶところは多いに違いない。
かくして建築技術者は栄光あるsilver ageを迎えて、silverとyoungの理想的共存社会が生まれ 、欠陥建物などは昔語りになる。
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