提案1:骨材の水洗費を確保せよ
今日のコンクリートの品質の悪さの2大要因は、骨材の水洗不良と練り混ぜ水量の過多である。海砂の塩分、山砂、陸砂、山砂利、陸砂利の泥分は、いずれも水洗いによって簡単に除去できるものである。この単純極まりない問題の解決策がどうして実行できないのか―。答えは簡単。 「コスト」である。
生コンプラントが購入する砂の1立方メートル当たりの単価は各地でまちまちであるが、おおむね2000円から3000円といえよう。この砂を、海砂にしろ山砂にしろ十分に水洗して洗浄するためのコストは、1立方メートル当たり500円程度である。現状でも建前としては、上記の2000円/立方メートルないし3000/立方メートルの中に若干の水洗費が含まれていることになっている。しかし実際には、全く行われていないか、ほんの形式だけとなっている場合が多い。そのため、ここでは現行の取り引き価格に水洗費500円/立方メートルを新しく追加するものとして、話を進めよう。
2000円/立方メートルないし3000円/立方メートルに対する500円/立方メートルの上積みは、それだけで見ると確かに大変なコストアップである。しかし、別の視点から考えてみよう。生コン1立方メートルの中には、大まかに言って約0.5立方メートルの砂が含まれている。また建物の床面積1平方メートルにつき、コンクリートの使用量はこれも大まかにいって0.6立法メートル程度である。そうすると建物の床面積は1平方メートルについて砂の使用量は0.6×0.5=0.3立方メートルとなる。この0.3立法メートル、つまり床面積1平方メートル分の砂の水洗費は、500円/立方メートル×0.3立方メートル=150円にかすぎない。1坪当たりに換算すれば、150円×3.3=500円である。
60万円のうちの500円をケチると
建築費を1坪当たりに60万円とすれば、60万円のうちのわずか500円をケチったばかりに、60年か100年はあるべき躯体コンクリートの寿命が、20年とか25年しかないと糾弾されるハメに陥る訳だ。60万円のうちの500円といえば、施主にとってもゼネコンにとっても、取るに足りない小額である。しかし骨材業者にとっては命にかかわる大金であることを忘れてはならない。
この、はした金のような大金を、どうやって骨材業者の手元まで行きつかせるか。これが問題解決の第1段階である。
決して、難しい話ではない。工事費見積書に、「骨材水洗費」という一項目を追加するだけの簡単なことで、解決できるはずだ。
第2段階は品質規制である。幸いなことに、建設省では今年4月から「コンクリート中の塩分の総量規制」を実施する方針とのことである。生コンの塩分含有量をワンタッチで検出できる器具も、建設省の評価を受け、最後の改良作業を行っている段階だと聞く。塩分の測定と規制はこれで解決できるとして、残る問題は泥分である。塩分と同じように「生コン泥分測定器」というのができればよいのだが・・・・・・。
こちらはそう簡単に行くまい。とすれば生コンプラントで小まめに試験する以外に手はない。現場でコンクリートを打つたびに、工事監理者が生コンプラントに出向いて砂の泥分含有量と有機不純物含有量を試験するように義務づけるのである。試験といってもJISに定められている「細骨材の洗い試験」ではなくて、メスシリンダーによる泥分沈殿量の簡易試験でよい。3〜4時間も経てば結果は分かるから、監理担当者は半日を費せば済むことである。試験の結果は写真に撮って、工事報告書に貼りつければ素人の施主が見ても一目瞭然である。
このようにして塩分量と泥分量を規制し、そのためのコストとして砂1立方メートルにつき500円、陸砂利1立方メートルにつき500円を計上する。水洗コストは、必要ならば1立方メートル当たり1000円でも2000円でも構わない。コンクリートの耐久年限60年〜100年を確保する費用と考えれば安いものである。骨材費が現在の2倍になったところで、総工費から見れば雀の涙ほどの金額である。
RC造の場合、建物重量のおよそ80%をコンクリート重量が占める。一方、建物の構造耐力および耐久力はその100%が、コンクリートの質によって決まる。それなのに表A−1,A−2で分かるように、生コンの金額は総工事費の5〜6%にすぎない。これは、おかしな話ではないか。50年も100年も有効に使う大事な社会資産として大金を投じて建設するのであるから、その耐力と耐久性をモロに負担する主材料の品質確保のために、もっと金をかけなければならないのは当然のことである。
現在の建築コストの考え方を、根本的に改めなければいけない。

本誌インデックス欄「躯体コストオフィスビルSRC10000平方メートル」のデータを基にして、建築費に占めるコンクリート費の割合、砂の水洗費の割合をはじいたもの
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