「専有・共用」の考え方
 区分所有法では、「専有」と「共用」の2つの言葉しか使われていないが、実際には所有上、使用上、管理上いろいろな場合が入り混っていて非常に複雑である。
 表1は、山本育三氏(関東学院大学教授)および田辺邦男氏(同技師)が昨年発表したマンションの領域概念表である。これを見れば、ことさらに説明を加えなくても一目瞭然であろう。 イ)欄のいわゆる躯体部分は共有財産であり共同使用である。管理も共同管理である。 また二)欄の各居住部分の仕上材、造作、器機などは専有財産であり、各家庭の専用に供され、管理も個別(私的)管理である。
 この2つは明確であるが、その中間にはロ)、ハ)欄に含まれているもののように、所有と使用と管理の形態が心ずしも同一ではない部分が多い。このような部分の取扱いについて、区分所有法では何ら説明がされていないのである。
 では、一体どのようにしたらよいのだろうか。ほとんどのマンションで問題になるところで あるが、一口に言ってしまえば、居住者の財産管理主体である管理組合において十分な話し合いを行なって、そのマンションのしっかりしたルールを決めるのが、一番よい方法であるといえよう。
 以上、修繕ということを軸にして、現在のマンションが抱えている様々な問題を取り上げてみた。
 マンションはなんといっても、まだまだ歴史が浅い。そして、マンションは、事務所ビルなどとは異なり、それまでの建築界がまったく知らなかったタイプの建物であるにもかかわらず、設計や施工方法について十分な研究がなされないまま、経済の高度成長とともに大量建設へと突入していったのである。こうして、生まれつき虚弱な体質をもった集合住宅が蔓延することになった。
 そして、今度は「修繕ブーム」「リフォームブーム」である。十余年前に月足らずで生まれたマンションを対象とする「修繕ブーム」である。健全な設計・施工による建物の修繕時期よりかなり早く、この「ブーム」が始まったため、本来あるべき
正しくつくられた建物の修繕方法が確立しないうちに、特例とされるべき修繕方法が、すべての建物を修繕するときの常識として定着しそうな状況なのである。
 本誌の読者である建築家および建築技術者諸兄には、こうした事情を十分にお考えの上、正しい建物の新築とともに、正しい修繕方法、正しいメンテナンス方法の確立に努められることを願ってやまない。
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