シンプルなものは長持ちする
 この建物は元々、昭和30年代に数年間、私が通っていた教会である。そして昭和36年に米軍の立川基地から放出された使い古しのカマボコ兵舎(半径2.7m,軽量鉄骨の半円アーチに、波型トタンを横張りしただけの野戦用兵舎)の解体材をもらってきて、柱脚の継ぎ足しやベニヤによる内装など、事務所を開いたばかりの私が面倒を見て、どうにか聖堂に仕立て上げたという思い出がある。
 その思い出の教会の牧師さん(当時から数えて3代目)から突然電話がかかってきたのは一昨年の4月であった。あのカマボコ兵舎の聖堂が、まだ健在で使用されていると言う。しかしどうにも手狭で困るから、思い切って建て直したいとのこと。こうしてこの工事は始まった。信者の浄財を積み立てての建設工事であるから、予算などまともにあろうはずがない。「できるだけシンプルにしましょう。シンプルなものは美しいし、カマボコ兵舎を見ても分かるように、シンプルなものは長持ちする」と私は主張した。
 シンプルで美しくということは、正直に言えば安く上げたいということである。そのために色々な構造や工法を検討したが、結局、RCの壁構造に決めた。理由は次の3つである。
 1:RCは打ち放しで使えば、木造と同じように構造材がそのまま仕上材となるので低コストにできる。
 2:しかもRCの打ち放しは、質素と誠実を旨とする教会にピッタリである。
 3:これまでの経験から、RCにすれば防水工事が不要である。これは建設費だけでなく修繕費の面でも大いに助かる。
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