■続出する瑕疵。修繕費は1億円以上!
 さて、修繕工事が始まってみると、今まで気付かなかった瑕疵が次々と発見された。
 瑕疵は躯体、仕上げ、設備、外構と全般に亘っている。工事を担当した某工務店の社員(10年前の新築工事の担当者とは別の人)ですら、あきれるやら恥ずかしくなるやらという有り様であった。防水工事のやり直しだけなら、2ヵ月もあれば十分と思われた工事も、こんな訳で結局は1年近くもかかってしまった。
 ただ幸いにも、修理工事の担当者は非常にまじめ、かつ仕事熱心な人で、居住者の受けも良かった。会社の名誉挽回とばかりに、一生懸命やってくれたのは、関係者の等しく認めるところであった。
 たまたまここの補修工事をやっている最中に、新宿でのマンション火事が新聞に報道された。2階の一部屋での出火による黒煙が、パイプシャフトを伝って9階の部屋に噴き出して、驚いて逃げようとした人が窓から落ちて死亡した、との記事である。そこでこのマンションでもパイプシャフトの気密を調べるために、甚だ原始的な実験をしてみた。まずポリバケツの中に砂を入れ、その中央に市販の発煙筒を置く。次にこのバケツを1階のガスレンジの上において、レンジと上部のレンジファンをビニールですっかり囲ってしまってから、発煙筒に着火した。
1階のある家で、洋室の床板が腐ってしまった。驚いて調べてみると、床下に何トンもの水がたまっていた。設計図では、1階床は土間コン上に束立て木造床となっているはず。ところが実際は、土間コンなしのRCスラブに開けた工事用穴がふさがれていない。しかも根切り跡が埋め戻されていないいので、床下は人が入れる深さ。そこに水が15トンもたまっていたのである。
 3階で洗濯機を脇へどかして見守るうちに、果たして点検ドアの周辺からもくもくと白煙が出始めた。チャチな実験ながら、煙が漏れることは分かったので、改めて全戸のパイプシャフトと集合排気筒の回りを再点検。開口部回りには、モルタルを詰め、また平常使用しない点検用扉の周辺は、アルミテープ貼りを実験した。テープ貼りとはこそく極まりないが、予算のこともあって、何もしないよりはまし、という気休めみたいなものである。
 こうして、このマンションは1年後には、発売当時のパンフレット通りの高級マンションに生まれ変わった。当初最も心配したのは、コンクリートの強度であったが、シュミットハンマーでのテストの結果、250〜260Kg/平方メートルあったので、多少の誤差を見込んでも大丈夫と分かり安心した。このマンションは、戸数も80戸と多過ぎず、場所柄というか住んでいる人々も良識ある人ばかりで、その点では非常にやりやすかった。修繕工事完了後、某工務店の工事担当者も私も感謝状を頂いた。  工事の費用は、おそらく1億円は下るまい。もしかしたら、もっとずっと多くかかったのではないかと思われる。
ある和室では、畳がブカブカになってしまった。畳をはがしてみると、配管のためにネダホームは小間切れ。和室と隣りの洋室の境に仕切りがないので、畳下にあるはずの砂も洋間に流れ込んだ。これでは畳もへこむはず。
また別の和室では・・・・・・。あまりに湿ってカビが生え、高価な和服をすっかりだめにした。畳をはがし、砂とネダホームをはがすと、空間器のドレン管に穴が開いて、水がしみ出ている。そこには配管してあったガス管(右の写真)は、錆びて穴が開く寸前。もう一年、気づくのが遅れていたら、ガス爆発か、中毒死・・・・・・。
現在のマンションでは考えられないことだが、ここでは3階排水管その他の配管が、2階の天井裏を通っている。排水管が破れたり詰まれば、下の階は水びたし。しかも、その貫通工事のお粗末さ・・・・・・ パイプシャフトをのぞいてみると、隣家の分電番の周囲は、コンクリートがなくて、仕上げ材の裏がまる見えだ。 屋根排水通路の調査で、あるべきところに排水の会所がない。変だ変だと探し回ると、物置の中。追加工事の物置が、おごそかに会所の上に鎮座ましましていたという次第。
外壁からの漏水を防ぐため、クラックを探して、コーキング材を注入。屋上のの防水も、徹底的に修繕した。
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