■防水立ち上がりが、たった150〜200mm
ともかく現場を見せていただきましょう、と私は次の日曜日、Sマンションへ出かけていった。竣工図はなかったが、幸い、設計図があったので、まずそれを見せてもらった。図面を開くと、72ページの図に示したように、防水層立ち上がりの水切りアゴの高さが、躯体寸法で150〜200mmしかない、これでは防水層立ち上がり部の端末処理がまともにできるはずがない。原因はここだな、とすぐに目星はついた。
ましてこの建物は、48年のオイルショック、狂乱物価のドサクサの真っ最中に工事されている。どんなヒドイ工事になっているか分かったものではないから、まず現場をよく調べましょう、と榎本氏を初め、管理にも一緒に3階の玄関前から梯子をかけて、屋上に登った。
なるほど、屋上は方々に修理の跡がある。しかし、それはすべて平坦な部分ばかりで、肝心の立ち上がり部には手をつけた形跡がない。股のぞきのような格好で水切りアゴの下を見ると、防水層の立ち上がり端部はコンクリートと肌分かれし、ヒラヒラしている。アゴの先端には水切り溝も切ってないし、モルタルによる水切りもない。これでは漏るのが当たり前ですよ、とその場でメモにスケッチし、説明すると、素人でもよく分かるとの返事。
思うに、このマンションを建てた某工務店は、雨漏りの度に、下請けの防水業者に無償で修理を命じていたに違いないし、防水業者もまたお義理で人を派遣していたに違いない。それにしても、工務店の社員でも防水業者でも、チラッとでもこのアゴの下の状態を見れば、漏るのは一目で分かるはずなのに不思議な話である。おそらくこの工務店の担当者は工事中も竣工後も、一度も屋上に登ったことがないのか、登っても気がつかないほどおめでたいのか、そのどちらかであろう。
天井からの漏水の原因は、これ。屋上排気筒の設計図を調べると、上図のように一応もっともな防水層の納まりになっている。しかし実際の水切りアゴの下は写真下のとおり防水層がむき出しで端部は肌分かれ。漏水も当然の納まりだ。立ち上がりが200mmしかないのでは、設計図のような入念な施工は難しい。
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