■乙第4号証 ●●●●氏提案のコアブロック廻りの溶接補強について

乙第4号証の6頁
左の図は●●●氏による乙第4号証の第6頁に書かれている図であって、この図の上半分は当て板補強の為に現状溶接部分をガウジングによって斫りとった図である。

ガウジングとは丸ノミで削って溝を掘ると言う意味で、実際には溶接棒に似た炭素棒と母材の間にアークを発生させると同時に、炭素棒に添って圧搾空気を吹き出すと溶融した鉄が吹き飛ばされて、丁度グラインダーで鉄板を削るときのように、もの凄い派手な火花の尾を散らしながら、みるみるうちに溝が掘られてゆく(屋内でガウジングを行う場合は、よほど上手に予防策を講じていないと飛び散った火花のために火災が発生する恐れがある)。
(株)●●による工事写真帳No.85

柱・コラム 溶接完了状況
そして、同じ●●氏の図面の下半分は、補強プレートを当てて柱と補強プレートと通しダイヤフラムが一体になるように補修溶接を行い、さらに図の上半分で斜めに取り付けられている裏当金を正しい位置に戻して、通しダイヤフラムと梁フランジを溶接し直した図である。つまり、この図は耐震改修指針 121頁の図に従って本件建物を改修すればこのようになるという説明である。上図の乙第4号証6頁の上半分の絵は、通しダイヤフラムと梁フランジの高さが揃っていない為に、裏当金を強引に斜めに取付けた図であるが、右上の写真は(株)●●による工事写真帳のうちの写真NO.85を転載したものである。この写真中、白○で囲まれた部分は、まさに裏当金が斜めに取り付けられている。
以上のように、上下階の柱とコアブロックと2枚の通しダイヤフラム、さらにはダイヤフラムに取付く梁端部が、言うなればバラバラになっている状態(平成10年6月24日原告側第二準備書面の二に詳述してある)をガウジングによって斫ったり、斜めになっている裏当金を除去して新たな裏当金を正しく取付けるという補修方法は、非常な困難を伴う方法であるというよりも、むしろ事態を悪化させる改悪工事になる可能性が大きい。
鑑定人が接写してきたコアブロックまわりの溶接部を見ると、上図や右上写真にあるように、コアブロックと梁端部の高さがきれいに揃っていないのを強引に溶接してしまった形跡があるし、スパッターも非常に多い。このような箇所をガウジングで溶接溝を造り、不良裏当金をやはりガウジングで除去したとして、除去の跡はやすり等で平滑に仕上げないと新しい裏当金を取り付けることも困難である。●●●氏の図のように、ダイヤフラムと梁フランジの高さの差を強引に溶接肉盛で補うということをすれば、この溶接部分で間違いなく破断するであろう。

さらに、乙第4号証で言う補修方法は、「耐震改修指針P.122」を根拠としている。 ところが、この耐震改修指針P.122については3つの不安がある。
不安の1
 同指針の前書きに「くれぐれも注意して単なる数値合せだけはしないで欲しい」と同指針検討委員会の高梨晃一委員長が書いているが、この意味は極めて重いものがある。(乙第4号証の計算結果がここに言う数値合せに他ならない)
不安の2 従来「これで良し」とされていた通しダイヤグラム方式の溶接集中個所に問題のあることが阪神大震災での損傷多発で分った。
不安の3 不安の2で述べた通しダイヤフラム方式のコアブロック部分に、マニュアルP.122の図に従ってほぼ全面的に補強プレートを隅肉溶接で重ねると、不安の2で述べた溶け込み溶接の熱影響部の集中の他に、ダイヤフラムの開裂という不安が生じる。

この
不安の2及び不安の3については次頁以下で説明する。
サイトのトップへ■  ■鑑定書のトップへ■  ←前のページへ  次のページへ