さて、本件の鑑定に戻るが、以上述べた通常の、「正しい鉄骨工事の進め方」を読み、通常の(本件建物類似の鉄骨構造)の工場内製作状況の写真と本件建物の工場内製作状況写真を比較すれば、本件鉄骨の製作状態が、あるべき「正しい工事」の進め方からかなりに外れていることが分かる筈である。

殊に、鑑定人を驚かせるのは、裏当金なし、コアブロック隅肉溶接の実施の他に、甲第15号証の1のP.16〜P.28に示された写真及び原告側第二準備書面(平成10年6月24日)の二によれば、コアブロック上下の通しダイヤフラムと大梁端部の上下のフランジプレートの高さが不揃いなことである。そして、その高低差0.1mmというのは僅かに1ヶ所に過ぎず、残る数十ヶ所では、高低差が1.5〜3.5mmにまで及んでいる。鑑定人はこれほどまで施工精度の悪い建物を未だ嘗て見たことがない。すべてのコアブロック部分において裏当金がない、開先のない厚い鉄板への隅肉溶接、フランジの高低差が大きい、と三拍子揃えば、あとはどこにどんな欠陥が潜んでいるか、全く分からないと言いたくもなる。
超音波探傷試験によって発見されたコアブロック廻りの溶接欠陥状態

甲第15号証の2の第4頁
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