■欠陥マンション 事例 その2
Dハイツ(仮称、横浜市)
意匠、構造、設備を全面見直し 入念な総合診断と補修を実施
日経アーキテクチュア 1987年11月2日号

「ちょっと診てもらえませんか」。管理組合の理事長から持ちかけられた相談に、構造家・井上博氏は「じっくり診る必要がある」と進言。以来、「こんな入念な建物診断は、恐らく日本で初めてではないか」と井上氏が言うほど、意匠、構造、設備を全面的に見直すことに・・・。経年劣化以前の問題である鉄筋のかぶり厚不足や屋根防水のまずさも明るみになった。

 横浜市。9万平方メートルに及ぶ広大な敷地に、8階建て11棟、11階建て5棟、14階建て3棟、合わせて19棟1,506戸の大団地が、昭和47〜49年に建設された。まさに高度経済成長の最盛期にあたる頃である。 企画、販売、設計、監理は公的な住宅供給団体。施工は全国大手クラスのゼネコン5社と地元大手ゼネコン2社のそうそうたる顔触れである。 団地全体の維持管理は、最初の9年間は販売者の指定する管理会社に全面委託されていたが、58年から管理組合によって完全自主管理が行われるようになっている。 自主管理は66ページの図に示す組織によって、現在も非常にうまく運営されている。戸数1,506、人口5,300人と言えば、行政単位でいう“町”に相当する規模。管理組合の執行部は町役場にも匹敵するような機能を果たさなければならないが、その組織の執行部は事務局長を含めて4人の内勤者と16人の外構係員に過ぎない。すべての団地の住人だが、このうち男性は2人だけで、残りの18人は主婦である。 事務室内の執務風景は町役場とはあまり変わらないが、忙しさだけは通常の町役場の3〜4倍はあろう。チープ・ガバメントの見本である。 ここでもう1つ感心したのは、事務局員の女性達が住民手製のプログラムでパソコン管理していることである。居住者リスト、駐車場、出納、会計など団地内のあらゆるデータが一瞬にして分かるようになっていた。惜しいことに、補修工事に関するプログラムはなかったが、これは我々が指導しながら作り上げた(次ページ)。
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