■鑑定の結論
以上述べたように、1)(乙第4号証)の他に、鑑定人独自の案として2)、3)という案を考えてみた。しかし、夫々の項で述べたように、どの案もいくつかの否定的要因を抱え込んでいることが分かった。
思うに、本件建物は鉄骨建築として一番大事な梁と柱の交差点であるコアブロック廻りにおいて、裏当金がない、開先のない厚い鉄板への隅肉溶接、通しダイヤフラムとブラケットの高低差が大きいという3拍子揃った欠陥を内蔵しているのである。しかも、この欠陥の巣窟ともいうべきコアブロックは本件建物の各階、各柱のすべてに亘っている。柱脚部分も含めると、建物全体の24個所の節点が全て欠陥の巣窟となっている。例えて言えば、人体において、すべての間節が骨粗鬆症になっているようなものである(人体の関節は自由に動かねば困るし、建物鉄骨の関節は逆に動いたら困るのであるが、肝心要の大事な所に大きな欠陥があるという点では同じに論じてもよいであろう。)。 よって、
鑑定報告書としての結論は、本件建物を修復することによって建築基準法及び関連諸規則に適合するだけの構造耐力を維持した状態に回復することは理論上も実際上も不可能である。
といわざるを得ない。
鑑定事項の1について否定的な結論に達した以上、2以下についても回答不能である。
以上
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