■2)案 柱の内部に隅肉溶接を施す補修案
作業手順
1.
柱の外部の外壁材ALC版を2列もしくは3列軒下から基礎部分まで取り外して、鉄骨の外部に穴あけ等の作業が出来るような足場を組む。
2.
室内は天井を剥し、床は仕上げ材を剥して、下地のコンクリート及びデッキプレートを柱の周辺1m幅で取り除く(図2)−1)。要は、現場で鉄骨柱脚の超音波探傷ができ、且つコアブロックの頂部及び下部全周に亘ってガウジング及び溶込溶接が出来るようなスペースを造る作業である。
3.
外壁のALC版を取り外して露出している鉄骨の外面に図2)−2に示すような縦長(四隅は円弧)の穴を開ける。
4.
図2)−5に示すように、この穴から溶接棒を差し入れて、柱脚及び柱頭部と通しダイヤフラムとの間に脚長12mmの隅肉溶接を施す。柱頭部の場合は上向き溶接にとなる。この柱頭部及び柱脚部の隅肉溶接によって、当初製作時の裏当金の欠如に伴う不溶着部分をなくすのが目的である。
5.
コアブロックの頂部及び下部には別に造っておいた裏当金を部分溶接にて取り付ける。(図2)−5)
6.
コアブロック外周の頂部及び下部、通しダイヤフラムとの間に施工してある脚長5〜6mmの隅肉溶接を含めてコアブロックの外周全体にガウジングによって溶込溶接用の溝を作り、その後この溝を溶込溶接にて完全に埋める。但し、作業順序としてはコアブロック外周4面の内、まず1面のガウジングをして溶込溶接を行い、次の面をガウジング、溶接というように1面ずつ仕上げていかないと4面一度にガウジングするとコアブロックが壊れて工事を行う意味がなくなってしまう。
7.
柱頭・柱脚及びコアブロックの頂部下部と通しダイヤフラムとの溶込溶接は完全に出来ているか否かを超音波探傷によって検査し、不備な個所があればガウジングによって手直しをする。
8.
柱脚部及び柱頭部には通しダイヤフラムから100mmの位置に、予め造っておいたPL19、幅50mmの外ダイヤフラムをレ形溶接にて全周溶接して取り付ける。
9.
図2)−2〜図2)−5に示すように大梁フランジの上下にPL12及びPL9にて予め造っておいた仕口補強材を隅肉溶接にて取り付ける。

図2)−1

図2)−2
この2)案は理論的には上述の1〜9までの手順で補修補強工事が出来るような気がする。しかし、4の穴から溶接棒を差し入れて柱頭・柱脚の内部に隅肉溶接を行うことは左右及び奥の3面は何とか溶接出来ても手前の面の隅肉溶接は不可能である。何故なら隅肉溶接は目視しながら溶接しなければならないからである。さらに、30cm角の狭い角型鋼管の内部で上向きの隅肉溶接を行うことは不可能であると鉄骨工場の技術責任者は言う。
コアブロックの内部に裏当金を付けることは出来るが、外部の隅肉溶接(脚長5mm)と共にコアブロックの板をガウジングしてグルーブ溶接をすると言う手順を4周次々に行う作業はこれまた非常に困難である。
7の超音波探傷で不良個所を発見したら、ガウジングして溶接し直すということも、言葉では言えても実際の工事としては不可能と言うべきであろう。 8,9の外ダイヤフラムの取り付けは出来るとしても、梁端仕口補強材を隅肉溶接で取り付けることは1)案で述べたような通しダイヤフラムと梁端の高さの不整合に目をつむっての強引なやり方であるから、果たして所期の強度が確保できるかどうか不安である。
以上の理由によって、この2)案は採用できない。
サイトのトップへ■  ■鑑定書のトップへ■  ←前のページへ  次のページへ