理想のコンクリート打設の提案 | ||||||||||||||||||||||||||||||
コンクリート工業新聞 平成10年7月 より | ||||||||||||||||||||||||||||||
W/C50%以下、スランプ12〜15の生コン打設と協組の問題 | ||||||||||||||||||||||||||||||
1 硬練り生コンの打設 日本の建築界では伝統的にスランプ20前後の軟練コンクリートが使用されて 来た。そして、コンクリートの品質規定は各種の条文上の建前を別とすれば事実上は強度だけである。その結果【コンクリートにヒビ割れはつきもの】との常識(?)が定着して【クラック誘発目地】という言葉が発明されている。 コンクリートの本来の目標は耐久性である。ヨーロッパの石造建築物が何百年もの寿命を保っているのに、日本のRC建築の寿命は20年とまで酷評された 一時期(昭和50年代後半)があった。幸いに生コンの塩分規制やアルカリ反応骨材の否定などで生コンの品質は若干改良されたかに見えるが、殆どの現場での生コンの発注が【スランプ18の軟か目!】の一言で片付けられているのは何とも 悲しいことである。先日もある生コン工揚の人が【現場に到着した生コンのスランプが17cmだったら『うちでは18cmの軟らか目を指定したのであるから、17cmのものは引取れない。持って帰れ!』と言われた】と嘆いていたが、まさに嘆かわしいとしか言い様がない。 私の事務所では数年前から理想のコンクリートを追及している。その手法は
アメリカ人にいわせればスランプは4インチ(10cm)が常識らしいが、日本の建築現揚としてはスランプ12は常識破りの硬練りコンクリートとして受け止められている。しかし、RC建造物の特性である「耐久性」を考えれば、「水の少ない硬練りの生コンを密実にしめ固める」以外に方法はないのである。 2 バイブレーターの効用 今の日本建築業界においてはバイブレーターの効用に対する認識が非常に低い。それというものスランプは18〜20程度の軟練りコンクリート(いわゆるジャブコン)の場合はバイブレーターによる振動で生コンが分離することも少なくないからパイプを掛けるのはほどほどにした方がいいからであろう。しかし硬練り生コンの場合はバイブなしでは施工不可能である。先ずホンプの筒先にはφ50又はφ60のバイブを2〜3台配置して、硬練り生コンが密な鉄筋の間を通り抜けて型枠中に行き渡るようにする。これを充填用バイブレーターという。 この他にφ40のバイブをもう1台用意しておき、充填後20〜30分後のやや落ちついたコンクリート中にゆっくりと差し込みゆっくりと引き抜く。これは締め囲め用バイプレーターで、充填されて一旦落ちついたように見えるコンクリートの中で、銑筋や砂利の下に集中している水や空気を追い出すためである。ポンプの筒先から出た時に、シャブコンの場合は液体に近いが、スランプ12〜15の場合はかき氷かシャーペット状になっていて空隙が多いから、ゆっくりとバイブを引き抜くにつれてボコッボコッと泡坊主が表面に浮き上がって来て、「ああ確かに締め固めが行われているなぁ」と実感できるものである。コンクリート工学協会で作られたビデオ教育講座のうち第4巻を見ればバイブレーターの効用がよく分るので卸一覧をおすすめしたい。 コンクリート打設日には、コンサルタントはどの職人さんより早く出動し、 朝礼前に一通り現場を見て廻って不備があれば指摘し、作業中はずっと付き沿って指導、注意を続ける。夕方、打設完了直後の15〜20分の間にポンプ屋さんと土工さん、それにゼネコン社員も集めてその日の反省会を開く・・・。翌日を待たずに記憶の生々しいうちに開くこの反省会は非常に有効で、一日の労働で疲れた身体も忘れて発言し質問する人達の顔は真剣そのものである。基礎と地中梁等、 第一回目打設部分の型枠をはがす時には従来のジャブコンとの品質の差は誰の目にも明らかであるが、特にコンクリート工の人達の顔には「やったぁ」と言う感動がどの現場でも見られる。この時、監理者や、コンサルはすかさず大声で職人さん達を誉め上げることが肝要である。 3 充填ボーヤの効用 バイブレーターをゆっくり引き抜くと、抜いた跡は砂利のない水分の多い、 モルタル状の痕跡が残る。これが後日のクラックのもとになりがちである。 そこで、この部分の局部的品質改良のために充填用のコンクリート棒が開発された。円錐形で長さ300、根元の直径40のコンクリート棒(充填ボーヤ)をバイブレーターの引き抜き跡に挿入する。人力で簡単に押し込めるが、周囲の水を吸い 取って均一なコンクリートとなる。押し込んだ部分を輪切りにしてもどこにあるか分らないという。忍者的効果を発揮するスグレモノである。 4 スラブにはタンピング 低スランプではスラブの打設時にも充填用バイブレーターは必要であるが、20〜30分後の締め囲めにはバイブレーターよりも足潜みとタンピンク(叩き)が有効である。長さ3〜4メートルの角材の両端に取手をつけて両端の二人が息を揃えてペッタン、ペッタンと叩きながら後退して行くか、或いは1人用のタンピンク平板で自分の足跡を消しながらスラブ表面を叩いて廻ればスラブコンクリートの中の空気と水は表面に追い出される。これを実行しない と、翌日にはもう鉄筋(スラブ筋やスターラップ)に沿ってクラックが生じている。こんなスラブは同じ生コンを使っても強度も低いし耐久性もないということになるから、「スラブにはタンピンク」という言葉をお忘れなく! 5 生コン協組の問題点 好況の時も不況の時も生コン業界は常にゼネコンからの値引きを強要される。 そしてまた容易に値引きを行って少しでもシェアを拡大しようとする不心得な一部業者のために生コンの品質と価格が低下して業界全体が迷惑する・・・。これを 防ぐために生コン協同組合を作って品質の向上と価格の安定を図っているが、そ れでも非組合員メーカーはダンピングを行うので、やむを得ず組合員の結束を固め組合員の正当な利益を確保するためには共同出荷等の措置が必要になって来る・・・。何といっても組合員全員とその家族の生活がかかっているのだから・・・。生コン協組の言い分はまあ以上のようなものである。 一方、需要家(とは言っても建築主やマンション住人ではなくゼネコンと工事監理者)側では、
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